交渉力 最強のバイブル

  • 著者: Roy J Lewicki
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2019年12月

 

交渉の仕方を勉強しようと思い、堺市北区の図書館で関連書籍を探し、一番良さそうだったので借りた。

書籍の正式名称は、「交渉力 最強のバイブル 〜人間力で成功するベストプラクティス〜」である。原書のタイトルが「Essentials of Negociation」とシンプルなのに対して、日本語版には、「交渉力」「最強」「バイブル」「人間力」「ベストプラクティス」といったキラーワードがこれでもかと詰め込まれており、節操のなさを感じる。

が、内容としては交渉を行うための知識が体系的に整理されており、分かりやすかった。最強のバイブルといっていいのかまでは分からないですが。

 

交渉の形態を、限られたパイを分け合う分配型交渉 (いわゆる値下げ交渉とか)と、共通のゴールのために双方の利益を最大化する統合型交渉の2種類に分け、それぞれについての基本的な考え方と具体的な交渉の進め方を解説している。

分配型交渉と統合型交渉は完全に分けられるものではなく、どのような交渉にも分配型と統合型の側面があり、また状況の変化や時間の経過によりその割合は変化する。

いずれの交渉でも、ゴールを設定すること、入念に準備することの重要さが強調されている。ゴールとは、交渉の結果、自分が求める利益のことだ。

 

分配型交渉では、自分の利益を最大化することに力点が置かれる。そのために自分の目標点 (例えば中古車の買値)、抵抗点 (交渉を中止する買値) を設定し、相手の目標点、抵抗点を推定し、出だしのオファー (最初の言い値) を決めることまでが最低限の準備になる。交渉が始まった後は、自分にとって有利になるように、相手に渡すべき情報と隠すべき情報を管理することが重要になる。

統合型交渉では、自分と相手の利益の総和を最大化することに力点が置かれる。そのために、情報の自由な流れと相手との信頼関係を構築することが重要な準備になる。分配型交渉で説明されるテクニックも応用可能だが、よりオープンな態度で、相手の真のニーズを理解する努力が必要になる。

第5章以降では交渉に影響を与える様々な概念が説明される。認知バイアス、力、倫理など。若干、概念同士の関係が整理されていない印象がある (自分がわかっていないだけかもしれない)。

個人的には倫理に関する記述が参考になった。例えば自分のステレオを誰かに売るとして、相手が気づいていない不具合を相手に説明すべきか否か という倫理的な問題に対する具体的な対処方法が説明されている。

 

ひとつ残念なのだったのは、本文中の記載と参考文献の対応関係が不明なことだ。参考文献は文末に著者のアルファベット順で羅列されているだけであり、文中の記載との対応関係がわからず、章ごとに参照すべき文献もわからない。

わかったからといって参照するとも思わないが、より深く知りたいと思ったときに前に進めない感がある。また文中の記載が、何らかの研究に裏付けられたものなのか、筆者の経験則なのか、または筆者の仮説なのか、といった区別をつけることができない。

 

異なる利害関係を持つ複数の人々と仕事をする機会が多いので、特に統合型交渉について理解を深めることができ、参考になった。チェックシートのサンプルなども記載されており、実際の交渉時に手元に置きながら参考にできる本だと感じた。

なので、図書館に返却した後、「ハーバード流交渉術」と一緒にAmazonでこないだ購入した。