屍人荘の殺人

  • 著者: 今村昌弘
  • 印象: 1 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年3月

 

※若干のネタバレを含みます。

想像だにしなかった事態に見舞われ、籠城することになったペンション内で次々に発生する殺人事件の謎を解く、本格ミステリ小説。

いろんなミステリ小説の賞を受賞し、映画化もされた本作だが、何というか全く噛み合うことなく読み終えた。なぜそんなことになったかということを、逆に考えこんだ結果、本作品が良いとか悪いとかそういう問題ではなくて、自分が小説に求めているものが、いわゆる本格ミステリというものとは全然違うところにあるのだという風に思った。

 

ミステリ小説の読み方のひとつとして、話を読みながら犯人やトリックを推理し、最後のネタバラシで答え合わせをする、謎解き的なやり方があると思うのだが、そういう観点では傑作的な小説であるのだと思う、というかそういう風にあとがきで解説されていた。

一方で、僕の小説の読み方は、世界観とか設定とか、そういうものを味わう要素が強く、かつ、その世界観的なものを個別の文章表現の味わいの積み重ねによって味わっていく感じなのだと思う。

「謎解きをしたい」というモチベーションがあるわけではないので、ラウンジに関係者が集まって、事件発生後の自分の行動やアリバイを説明していくというような、ミステリ小説に不可欠な描写が、僕にとっては世界観の構築の妨げになったように思う。作品に世界観がないと言いたいわけではない。

 

本作で発生する「想像だにしなかった事態」というのは、そんなこと起こったら殺人事件どころじゃねえだろ、というくらいにヤバイ感じの事態なのだが、事態に巻き込まれて、一時的なパニックを起こしながらも、殺人事件の現場を仔細に観察したり、お互いのアリバイを確認し合う場面が (本格ミステリだけに) 多数あり、そこに「読者に謎解きを楽しんでもらうために情報提供をしている感」を感じてしまい、世界観に浸れなかったように思う。

また、そのようなミステリ小説的な描写とはまた別に、いやその場面でその発言、行動はないでしょう と思ってしまう言動が色々とあり、世界観に浸れなかった。例えば以下のような感じだ。

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  • かなり損壊が激しい死体がある殺人現場に何回も立ち入る。腐敗も進むし臭いもすごそうで、事件解決が目的とはいえ普通の人間では無理なのでは、、、ゲロ吐きまくりながらそれでも捜査する、みたいな描写があれば共感できたかもしれない。

  • 自分の罪を隠すために他人の犯行を見逃す。トラウマがあるとはいえ、そこまでするだろうか、、、江戸時代の侍みたいに、信念曲げるくらいなら迷わず切腹を選ぶ みたいなキャラ設定だったら共感できたかもしれない。

  • かなりヤバイ状態で、脱出不可能のペンションで3日間過ごしているのに、不潔感を感じない。頭が痒いとか体臭がひどいとか、そういうところから人間関係がギクシャクして心理的に追い込まれていく、みたいな事態が必然のように思うのだが、基本的にみんな明るい。

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極限状態の中でも、所々でユーモラスな場面があったり、甘酸っぱい青春的な場面があったりするので、ファンタジー的な世界観だと捉えたらいいのかなとも思って読んだのだが、一方で主人公が震災のトラウマを引きずってるとか、チャラ男っぽいやつが意外とシリアスな過去を背負っているといった、リアルな設定も出てくるので、最後まで世界観を掴みきれずに読み終えた感じがある。

「奇想と謎解きの驚異の融合」という表現が背表紙にあるのだが、奇想と謎解きがともにハイレベルすぎて、僕の頭ではついていけなかったのではないかと思う。

東野圭吾や伊坂幸太郎もミステリ作家に分類されると思うのだが、僕にとって本作は、これら作家のものとは全く別次元のミステリ小説であり、色々考えさせられた。

 

唯一、一番最後のホームズとワトソンの結末については予想がついた。