突き抜けるデザインマネジメント

  • 著者: 田子學
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年4月

 

デザインマネジメントという考え方とその実践例を述べた本。

第1章 (p150) を読んだ時点で、なんだこの他者の著書や政府HPからの引用の寄せ集めだけで作られた本は、と大変がっかりした。第2章以降は、著者が手がけたデザインマネジメントの事例ということがわかっていたので、どうせただの宣伝だろうと、期待せずに読んだのだが、ここが予想を裏切って面白く、デザインマネジメントの大切さや実践方法を、大雑把だが理解することができた。

昔から、ビジョンとミッションの違いが何なのか、よく分からなかったが、本書では以下のように整理されており、分かりやすかった。

ビジョン: WHY ミッション: WHAT バリュー: HOW ※上にあるほど上位概念

デザインマネジメントというとアート的な思考が必要だ みたいに思いがちだが、要するにビジョンを明確に設定して、そのビジョンに整合するように顧客とのコミュニケーションを注意深く設計しましょう というのが本質のように思えた。ビジョナリー経営的な考え方と根っこは同じで、それよりもアート的な観点で高度にしたようなものなのだろうと思った。

なので、デザインマネジメントがどんなとき時も必要かというとそうではなく、特に必要になるのは、今まで付き合ったことのない人にコミュニケーションを取る場合だと思う。三井化学の場合は、それが既存顧客以外の (技術スペック以外の価値に興味がある) 新しい顧客 (結果的に、アパレルや食品業界) であったし、塩山製作所 (が新しく始めたワイン事業MGVs) の場合は、一般人だったということなのだと思う。その証拠に、塩山製作所のウェブサイト (MGVsではなく、半導体製造業としてのサイト) を見ると、ごく普通の中小企業サイトだった。

自分は今電池の委託開発を行う会社で仕事をしているが、この会社の場合、現状の顧客は技術スペックにほぼ100%興味のある方々なので、まずは技術をしっかり理解してもらえるようなビジョンや業務設計が必要になるのだと思う。それができた後に、さらに顧客や事業の幅を広げるために、デザインマネジメント的な考え方が必要になるのではと思った。

なので、自分の仕事をうまいことやれば、2-3年後くらいに大事になってくる本だと思った。

佐藤可士和氏の本にも書いてあったけど、クリエイティブディレクター的な人は、顧客の課題を解決するときに、新しい何かを見つけるのではなくて、答えは顧客と向かって座るテーブルの上に既にあるのであって、その答えを顧客と一緒に見つけるのが自分たちの仕事だと思っているようだ。

そういう態度はなんとなく共感できて、とても大事だと思うし、またそんな態度でやる仕事はとても楽しそうだと思った。