文明崩壊

  • 著者: ジャレド・ダイアモンド
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年8月

 

「銃・病原菌・鉄」で有名な著者が、文明 (=人間社会) が崩壊する危機を乗り越える道すじを考察した本。過去に文明崩壊した事例を紹介しながら、文明崩壊の要因を整理し、その後、現代において崩壊のリスクを抱える国と地域について言及し、崩壊を防ぐために社会と個人はどうあるべきかが述べられている。

 

過去の事例としてはイースター島やマヤ文明が有名であり、興味を持って読んだが、江戸時代の森林環境問題も取り上げられており、徳川幕府によるトップダウンの管理によって持続可能な森林管理が実現されたという解説に、徳川幕府の意外な一面を見た気がした。

 

話題は多岐にわたり、ページあたりの情報量がものすごく多いので、読むのに1ヶ月くらいかかった。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書 (僕が読んだのはホモ・サピエンスだけだが) は本著者のものよりも良い意味で情報量が少なく、表現も平易で、読んでいて頭に入りやすいと感じる。テーマは違うが世界を多角的に概説する作品の著者として、ダイアモンド氏よりもユヴァル氏がなんとなく世の中的に取り沙汰されている感があるのは、時間的な差もあると思われるが、この辺の表現方法の違いにも起因するのかなと感じた。

 

僕は昔から環境問題に関心が高い方だと思っている。子供の頃に、何かの本で「歯を磨いている間に水を出しっぱなしにしてるとバケツ何杯分の水が無駄になるので水を大事にしましょう」みたいな一文を読んで衝撃を受け、以来夜中に家中の蛇口の水漏れを確認して回るという行動を何年か続けていたことがある (やらないと心配で寝られなかった、環境意識というより心理的な問題だったかもしれない)。

 

大人になってからも、自分が先進国の住民として資源を浪費していることに罪の意識を感じつつ、自分ができる範囲のささやかな取り組みだけを続けてきた (ティッシュペーパーを使いすぎないとか)。

 

本書を読むまでは、いわゆる循環型社会というのは、太陽光エネルギー、電池、農業技術をがんばって駆使することによって実現できると、漠然と思っていた。自分が関わっている電池は上記3要素の中の重要アイテム (というか一番技術革新が求められているボトルネック) であって、自分がその仕事に曲がりなりにも関わっていることに多少のプライドもあった (と言いながら、電池を試作するのに日夜大量の電力と化学物質を使用し浪費しているわけだが)。パーマカルチャー的な手法で、持続可能な箱庭を作ることができ、その箱庭をビルディングブロックとして組み合わせることによって、グローバルな問題も解決できるのではということを漠然と考えていた。

 

本書を読んで、当たり前なのだが、この考えがいかに浅はかで、世の中そんなに甘くないということを突きつけられ、知識が増えた分、混乱し途方に暮れてしまっているのが正直なところだ。

 

途方に暮れたタイミングで、先日TV放送されていたエヴァンゲリオン新劇場版Qを見て、結局人類補完計画的なものが発動してインフィニティの成り損ないになり全てリセットされるから環境問題に気をもんでもしょうがねえよな、とか心のどこかでよぎってしまうのが情けないところだ。

 

著者はそういう人間の心の弱さを多分よく理解しており、このような途方に暮れがちな読者を想定して、最後の方の章で、勇気を出して一歩を踏み出すよう鼓舞しているように思う。参考になりそうだと思ったキーワードを自分用に記録しておく。

 

  • FSC: 森林管理協議会
  • MSC: 海洋管理協議会
  • Royal Dutch Shell