スプーンと元素周期表

  • 著者: サム・キーン
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年1月

 

元素周期表が完成するまでの経緯をたどりながら、各元素にまつわる発見・活用・濫用・悲劇を解説した書籍。

 

無機化学を勉強しようと思って、シュライバー無機化学を買ったものの、一向に読み進めず、逃げ道を求めるように図書館で借りた。

 

乱暴にいってしまえば、元素に関する雑学のようなものを全部一緒くたにしたような本で、個人的には勉強になったが、冒頭に書いたようなコンセプト以外に一貫した筋がないので、話があちこちに飛んで、たまに読むのがしんどくなる。

 

また章立てになっていて、章ごとにいくつかの元素がまとめて紹介されるのだが、章立ての関係上、紹介される元素に一貫性がなく、読み終わった今になって「あの元素って結局なんだったっけ」と振り返っても、思い出せない。

 

個人的に興味を持ったのは、常温核融合に関するもので、レントゲンによるX線の発見 (偶然、自分の骨が透けて見える現象を目撃したレントゲンは、自分の頭が狂ったと思い、あらゆる手を尽くしてその発見を否定しようとしたが、その試みに失敗し、X線の発見を結論づけた) と対象的に、 フライシュマンとポンズによる常温核融合 (と思われる、パラジウムに重水素を貯蔵していたらパラジウムが溶けるほどの発熱が発生した現象) の発見を、ろくに検証せず常温核融合と結論づけたとして「病的科学」と断定している。僕には核融合に関する知識が全く無いのでこの件で意見を持たないが、山口栄一京大名誉教授の最終講義でこの話題をちょうど聴いたところだったので、今後どうなるか、興味を持っている。

 

あとは、超重元素、と呼ばれる存在も興味を持った。基本的に原子核は陽子と中性子の数が多くなるほど、核力が働きにくくなって不安定になるのだが、特定の陽子/中性子数の原子が例外的に安定構造を取るというもので、それによると原子番号132か136だかまでは安定的に存在する元素が理論上ありえるらしい。実用上役に立つかはともかく、未開の領域として夢のある話だと思った。

 

この本が雑学的であるということを批判するつもりではないが、そのうち、東大クイズ王伊沢氏もしくはそれをさらに超えるマニアックな人物が、元素雑学王とか言ってここに書かれてるウンチクをテレビで紹介してくれる日が来るかもしれない。