宇宙が始まる前には何があったのか?

  • 著者: ローレンス・クラウス
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年2月

 

原書の題目は「A Universe from Nothing (無から生じた宇宙)」で、副題は「Why there is something rather than nothing (なぜ何もないのではなく、何かがあったのか)。」まえがきで、本書の1つの目的は、副題の問に対して答を示すことであり、「宇宙は神が無から創造した」という神学者などの主張に対して最新の物理学の知見に基づき反論することである、と述べられている。なんで邦題を勝手に変えたのか、よく分からないが、とりあえず気にせず感想を述べる。

 

基本的に色々難しくてよく分からなかったが、つまるところ、現在の宇宙は「無」から生じた、ということを現代物理学は解き明かしつつある ということなのだそうだ。それはつまり、ビッグバンによって宇宙が生じる前の状態についての解明が進んでいるということである。ちなみにここで書いた「前」というのは、ビッグバンが時空を生み出したという認識に基づいていうと、時間的な「前」という意味であっているのか、もしくはそうでないのか、そのへんはよく分からない。

 

ビッグバン前の「無」から宇宙が生じたことを明らかにしつつあるため、神が宇宙を「無」から創造したという有神論者の主張は間違っている と主張しているが、「無から宇宙が存在する『可能性』を用意したのは神だ」と有神論者は主張できるようでもあり、根本的な解決にはなっていないことは筆者も認めている。筆者は結局、科学は客観的な事実に基づいて世界認識をアップデートしつつあるのに、有神論者は「神ありき」で数百年前から同じことを主張し続けているその思考停止感に対して厳しく批判しているのだと思う。

 

ただ、もし本書は、あまりにも理解が難しい概念が多数出てくるため、下手すると宗教的な文章に見えなくもない。この本は怪しい宗教家が書いたデタラメの宇宙観を述べたものだ と誰かに言われても、多分僕は気づけないだろう。

 

科学における「なぜ」という問いは、「いかにして」という問いと認識すべきである という著者の主張が印象に残った。