「ファインマン物理学」を読む

  • 著者: 竹内薫
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年2月

 

サイエンスライターの竹内薫が書いた、物理学の名著であるファインマン物理学の解説本。量子物理学のことをもう少し知ろうと思って読んだ。

 

量子物理学はこの宇宙を支配する原理を今のところ最も厳密に表現できる学問であり、我々が観測している物理現象は、波と物質の両方の性質をもつ粒子が複素数の世界で相互作用した結果、表層的に現れて見えるものである、ということを改めて理解した。というか、多分理解できてないけど、世の中そういうもんなんだなと確認した。

 

ファインマンによると、人間が地面を歩くとき、地面を突き破って落下しないのは量子物理学で説明がつくらしい。それは粒子の運動量と位置の積は一定の数値以下にならないという不確定原理によるもので、重力によって原子同士が近づき、位置の誤差 (というか、摂動みたいなもの? よくわからん) が低下すると、その分運動量の誤差が大きくなり、靴と地面の間の原子同士が反発することで落下を防ぐというものだ。狐につままれたような話だが、こういう事例をたくさん説明することで、数学的にではなく直感的に量子物理学を理解できるというのが、ファインマン物理学のすごいところらしい。

 

竹内氏は本書の中で、ファインマン物理学はまず第5巻から読み始めることを推奨しており、本書の構成もそのようになっているが、それも、第5巻で述べられる総説的なところが直感的に量子物理学を理解するために好適であるから、という理由らしい。

 

前回に読んだ、「宇宙が始まる前には何があったのか?」という本にも書いてあったような気がするが、不確定原理というのは誤解を招きやすい概念のように感じる。高校物理の教科書だと、ある粒子の位置を精度よく観測しようとすると、その分運動量が不定になる みたいな風に説明されることがあるが、この説明によって、物理現象が観測者の介在によって異なる挙動を示す、バタフライ効果みたいな概念のように捉えられることがある。でもそうではなくて、不確定性原理というのはあくまでも粒子の挙動を支配する原理である、ということが本書でも何回か指摘されていた。

 

この本を読んだ後にそのへんをウロウロすると、目に見えている現象の裏には複素数世界のよく分からない相互作用がたくさん発生しているんだな ということに気づき、いろんなことがどうでも良くなって、気分が晴れたような気持ちになった。