サブマリン

  • 著者: 伊坂幸太郎
  • 印象: 1 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年4月

 

家裁調査官の日常、およびちょっと変わった調査官の陣内の日常を描いた小説「チルドレン」の続編。無免許運転で人を死なせてしまった少年にまつわる話。

 

無免許運転をした少年は、実は10年前に同じような無免許運転の暴走に出くわし、友人の一人を失ったという境遇を抱えている。犯罪を冒した少年は大人と同じように裁かれるべきなのか、人を殺すつもりは無かったのに結果的に殺してしまった人間と、人を殺す意思を持ちながらそれを行動に移していないだけの人間とは、どちらが悪い人間なのか、といったような葛藤を家裁調査官の立場から描きつつ、陣内という特異的なキャラクターがそんな葛藤を軽やかに飛び越えて少年に希望を与える様が描かれている。

 

テーマがテーマなのでしょうがないのかもしれないが、全体的に、説教臭い感じがあり、また伏線の効きがイマイチな感じがあり、登場人物を活かしきれていないような感じがあった。チルドレンは短編小説形式であり、色々な事件 (視点) から陣内の生き様が描かれていたように思うが、今回は1つの事件が主題になっており、広がりに乏しいような感じがした。特に木更津杏奈の存在意義がよく分からなかったし、なぜこの人だけフルネームで呼ばれるのかもよく分からなかった。

 

物語の中で、陣内 (と武藤という物語の語り部的な人物) が通り魔のオッサンを捕まえるシーンがあるのだが、そこで陣内が言った「どうせ自暴自棄になるなら、弱いやつを傷つけるんじゃなくて、絶対無理だと思うようなことやってみるとか、そういう気持ちに何でならねえんだよ、その方が面白いじゃねえか」みたいな感じのセルフが印象的だった。

 

物語の中で、チャールズ・ミンガスというジャズバンドが出てくるのだが、小説中の架空のバンドだと思ってたら実在してた。取り上げられていたジャズのアルバムはネットで検索してYoutube Musicで聴いた。というか聴きながらこれを書いた。