残り全部バケーション

  • 著者: 伊坂幸太郎
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年7月

 

悪いこと全般を仕事にしていた岡田と溝口というコンビを中心とした群像小説。岡田が仕事から足を洗うことを申し出ると、溝口がその条件として、「デタラメに押した電話番号の相手と友達になること」を提案する。デタラメな電話番号の相手は、今まさに離婚しようとしている40代くらいの男で、男が家族と最後の団欒をしているところから物語が始まる。

 

この団欒をもって家族は解散、という段階になってもなんとなく飄々としている家族3人の会話から、急に携帯にメッセージが届くという冒頭の謎展開がとてもいい。溝口が自分の仕事のボスである毒島と対峙する最後のシーンもいい。

 

岡田は、当て逃げや強請などを生業としているが、心の底から悪人というわけではなく、かといって自分のモラルと仕事の間のギャップに深く思い悩んでいるわけでもなく、仕事から足を洗う理由も「自分が仕事すると相手が悲しい顔するのがなんとなく嫌になった」というもので、何となく飄々としている。登場人物が全体的に飄々としており、それが読んでいて心地よい感じだった。

 

伊坂幸太郎が描く悪人は、どこか人間味とかおかしみがある。たまにどうしようもないもない悪人が出てくることがあるが、そういう人間は小説の中できちんと落とし前を付けさせられる、というのが、伊坂幸太郎の小説の1つの型になっているように思う。そこの型を信頼しているから、どうしようもないやつが小説に出てきても、安心して読み進めることができる気がする。

 

自分が「残りの人生は全部バケーションみたいなもん」と言えるのはいつだろうかと思う。岡田みたいに、想定余命の何十年か前に言えたら最高 (でも退屈な気もする) だが、自分の場合はせいぜい、死ぬ何日前か、何分前か、そんなところだろうと思う。