リーダーを目指す人の心得

  • 著者: コリン・パウエル
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年9月

 

元米国国務長官であるコリン・パウエルの自伝、人生論、リーダーシップ論。伊坂幸太郎の「彗星さんたち」に出てくる本で、興味を持ったので読んだ。

 

上記伊坂氏の小説を読んだときにも書いたが、タイトルが若干説教くさく上から目線的だが、これはパウエル氏の責に帰するものではない。本書の原文タイトルは「It worked for me: In Life and Leadership」で、直訳すると「人生やリーダーシップについての私なりのやり方」みたいな感じになると思われ、「心得」みたいな言葉はどこにもない。

 

米国では、一時は大統領候補とも噂されたくらいに著名で人気のある人物なので、↑のようなタイトルでもマーケティング的にいけてたのだろうが、日本ではそこまで著名ではないので、自己啓発本みたいなノリのタイトルにする必要があったのだと思われる。もっとも、もっと直訳的なタイトルであったとしても、「パウエル流・人生とリーダーシップの方法論」とか「黒人初の大統領を嘱望された男が語る人生とリーダーシップ」とか、自己啓発的にされかねないので、どちらにしてもどうしようもなかったのかもしれない。

 

本の内容は、原書タイトルの通り、リーダーとしてのあるべき姿について、実体験に基づいたパウエル氏の考えが示されている。小見出しが格言のようなもの (例えば、「必要だと思う以上に、人に親切にせよ」とか) になっていて、それに対する解説なり彼の考えが示される、それが集まって章になる、というのが基本的な構成だ。

 

実体験に基づいた記載なので説得力がある。個人的に印象に残ったのは以下の2点だ。

 

1.常に自分の組織の現場を歩き回り、部下とコミュニケーションを取りながら、細かい現象に目を配り、そこから得られた情報によって組織の状態を理解する。また問題の兆候をそこから発見し、すぐに改善の指示を出す。例えばしょんぼり歩いてくる軍曹に声をかけてみたら、優秀な軍人を選ぶコンテストに応募したけど落選したとのことで、もう少し聞いてみたら、そこに応募するよう指示を受けたのは昨日の夜だったとのことで、それを知ったパウエルはすぐに直属の部下を呼び出し、「こんなことを2度と起こすな。部下に準備を整えさせろ、それが上に立つものの務めだ」と言った。

 

2.部下を信頼する。コミュニケーションを取り、部下と信頼関係を構築することで、組織全員がパウエル氏を信頼するようになる。そうなると、部下は「パウエル氏に恥をかかせるわけにはいかない」と思い、組織のために力を尽くしてくれるようになる。

 

生きるか死ぬかの極限の状況で指揮を取ってきた軍人が語るリーダーシップというのはとても参考になると思った。

 

最後の章の「人生を振り返って - 伝えたい教訓」のところに、彼自身も人生の汚点であると言っている国連でのスピーチ (イラクでの大量破壊兵器の存在に言及したもので、結果的に誤りだった) についての経緯や考えが述べられているが、ここだけちょっと痛々しい。