レイクサイド

  • 著者: 東野圭吾
  • 印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2021年12月

 

中学受験を受ける子供のいる4組の家族が、湖沿いの別荘で勉強合宿をしているときに起こった、殺人事件の話。

 

殺されるのは主人公である並木俊介の会社の部下である高階 (たかしな) 英里子で、色々事情があって別荘に押しかけてくるのだが、その晩、俊介が別荘を離れている間に、何者かに殺害される。殺したのは俊介の妻の美菜子で、俊介と不倫関係にあった英里子から、俊介と別れるよう迫られたことに逆上して殺してしまったのだという。

 

俊介が警察に通報しようとすると、4組の家族のうちの藤本という医師の男が、全員で協力して、英里子の死体を湖に捨て、殺人事件を隠蔽することを提案する。

 

普通、殺人の隠蔽に協力することなんてありえないのだが、4組の家族には、それをするだけの理由があった。藤本いわく、その理由は、1) そもそも俊介の不倫が発端で起こった事件であり、美菜子は不倫の被害者とも呼べる立場であり、友人と呼ぶべき美菜子に犯罪者の汚名を着せたくない、2) 殺人事件が公になれば自分や自分の子供にも捜査の手が伸びることになり、そうすると周囲が騒がしくなって中学受験どころではなくなるから、ことを荒立てたくない、というものだという。

 

俊介は悩んだ末に藤本の提案に乗り、他の家族と協力して、事件の隠蔽を実行する。しかし、4組の家族には、俊介が知らない別のつながりがあり、そのつながりが事件の隠蔽に加担する本当の理由になっている。隠蔽工作を進めながら、俊介は少しずつその本当の理由を明らかにしていく。

 

全体的に、登場人物が全員上流階級の人間で、基本的には金に物を言わせて親のエゴを通していく感じの人間なので、あんまり感情移入はできないけど、小学生の子供を持つ親としては、テーマがタイムリーであり、興味深かった。

 

小説の冒頭で、中学受験の是非に関する議論が登場人物間でなされている。俊介は消極派で、本人が希望もしていないのに、小さいうちから勉強漬けにすることは子供の教育としてあるべき姿ではないという意見を持っている。これに対して、俊介以外のメンバーは全員積極派で、小さい子供は将来のことなんて何も分かってないのだから、進路を決めるのは親としての当然の責任であり、将来の可能性を広げるためにできるだけ良い学校に行かせる努力をするのは当然だ、という意見である。世の中の親の意見を代弁するものだと思われ、大変参考になる。

 

一方で、子供は親の期待に応えなければならない、というプレッシャーを少なからず感じる描写がところどころでされている。それを可愛そうだと思うか、将来のための必要経費と思うかは、読者の教育観によるだろう。