蛇にピアス

  • 著者: 金原ひとみ
  • 印象: 1 (1-3)
  • 読んだ時期: 2022年3月

 

「高橋源一郎の飛ぶ教室」というラジオをたまたま聴くことがあって、その中で金原ひとみの小説が紹介されており、読んでみようと思って図書館に行ったら、紹介されていた本が無かったので、著者の本の中で一番ページ数が少ないこの小説を読んだ。

 

生きることに色々不満を持っている19歳のルイという女が、ピアスやらタトゥーやらの身体改造を通し、かつサディスティックで暴力的な謎の人間関係から新しい価値観を獲得していく感じの日常を描いた小説。

 

描かれているのは痛みや苦しみを通して生を実感する現代社会の若者の姿であるが、痛いこととか苦しいことが嫌いな僕にとっては読むのが辛い場面が多い。タイトルの「蛇にピアス」が直接的に象徴するのは、舌の先端が2つに分かれたスプリットタンのことで、小説の冒頭で、ルイが偶然出会ったアマという男が舌をスプリットタンにする方法を説明をしてくれるのだが、その説明がなんせ痛々しく、開幕2-3ページで恐怖が訪れ、その後ルイがスプリットタンにするために舌にピアスを入れるシーンがこれまた痛々しく、全体的に痛々しくて読むのが辛い。

 

また、ようやくルイの舌拡張が落ち着いてきたと思ったら、ある男が死亡するのだが、死ぬ前にその男が受けた仕打ちの描写がとんでもなくサディスティックであり、やっと痛々しさから解放された矢先にサディスティックを突きつけられる。

 

読んでから、本小説が芥川賞受賞作だと知ったのだが、僕は物語そのものよりもサディスティックな表現への恐怖が勝った。そんな痛みを求めなくても生きる実感色々あるやろ、という感想を持つのは自分がオッサンである証拠だろう。