セイバーメトリクス入門

  • 著者: 蛭川皓平
  • 心に響いた度: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2022年8月

 

統計値を駆使して野球選手を評価するセイバーメトリクスの基本的なところが説明されている本。大学のときくらいに、インドかどこかに旅行にいったときの飛行機で「マネーボール」の映画を見て以来、セイバーメトリクスには興味が合ったので、読んだ。

 

セイバーメトリクスの概念的なところは知っていたので、主要な指標がどのような経緯で成立し、どのように使われているか、またそこからどのような知見が導かれるか (特に、従来の野球の定説は本当に正しいのか、というところ) に関心を持って読んだ。

 

犠打は得点に寄与しないとか、打者の得点力は打率よりも出塁率が重要、といった知見は前から知っていたが、意外だったのが、投手の能力を判定する指標には、打たれたヒット数を含むべきではなく、三振、四死球、本塁打だけが考慮されるべき というもの。本塁打以外の打球がアウトになるかセーフになるかには、野手の守備力が影響するから、投手の責任範囲からは除外すべき という考えに基づいている。それ以外だと、勝負強い打者 (クラッチヒッター) は存在しない というもので、得点圏打率が毎年優位に高い打者というのは、統計的には存在しないのだそうだ。

 

常識的、経験的には違和感があるけど、よく考えればたしかにその通りだなという知見があちこちに散りばめられていて、面白かった。野球以外の、もっというとスポーツ以外でも、こんな感じの統計処理で分かることも増えてくるのだろうと思う。

 

一方で、野球は結局読み合いのスポーツだから、セイバーメトリクスで得られた定石に従うだけだと、策を読まれて思った結果が得られない、という状況に陥る。盗塁は得点期待値を下げる行為だ、という共通認識があったとして、守備側が盗塁に無警戒になれば、盗塁の成功率は上がり、攻撃側に盗塁の選択肢がでてくる。

 

セイバーメトリクスがもたらしたのは新しい常識であって、その常識を土台として、如何にして相手の裏をかくかが、(少なくとも目先の一戦の) 勝敗を分けるという勝負の本質は、何も変わっていないのだと思った。

 

なので結論としては、新しい概念を作るやつが一番偉い ということだ。