限りある時間の使い方

  • 著者: オリバー・パークマン
  • 心に響いた度: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2022年9月

 

タイムマネジメントや生産性に対する考え方を、根本から見直すための本。

 

イギリス著者の日本語翻訳版で、大変パッとしないタイトルであり、「NYタイムズ、WSJ絶賛! ひろゆきも絶賛!」という、タイトルと同じくらいの巨大フォントで書かれた背表紙の売り文句がなければ、見向きもされなかったかもしれない。原書のタイトルは、「Four Thousand Years: Time Management for Morrals」。

 

妻がたまたま購入してきて、ちらっと読んでみたら面白そうだったので、週末の間に全部読んだ。

 

本書では、「どうやったらもっと生産性を上げられるか?」という、一見普遍的に見える問いを、根本的に否定している。否定しているというか、その問いの大前提にある問いに真摯に向き合っている。

 

そもそも、生産性を向上する目的は、本当に大事なことにもっと多くの時間を使うことで、人生を豊かに生きることにある。ところが、この目的は永遠に達成されることがない。なぜなら、生産性を向上することで空いてきた時間には、人間の好むと好まざるに関わらず、更に多くのどうでもいいタスクが放り込まれることによって、無限に生産性向上を求められ続けるからだ。というのが本書の主張である。

 

で、どうでもいいタスクで人間の時間が埋め尽くされ続ける理由は、外部要因ではなく、内部要因、つまり人の意識にあるとする。生産性を向上したところで、人間は所詮、4000週間くらいしか生きられないという事実から目をそらし、いつまでも青い鳥を追いかけ続けることによって、現実と本当の意味で向き合わないことが、生産性に関して人間が抱える根本的な問題であるとする。

 

これに対する解決策は、超簡単に言うと、現実を受け入れて、今をありのままに生きなさい というものだ。生産性を向上する取り組みは、自分の人生は短く、いつか必ず死ぬ ということを受け止めた上で、考え始めなければならない と主張する。

 

緒方貞子はじめ多くの人々が、これまでに何度もされてきた主張だと思うので、そういう意味では目新しさは全くない。しかしながら、上記主張を、生産性、タイムマネジメントの文脈で行ったとに意義があると思う。