死ねばいいのに

  • 著者: 京極夏彦
  • 心に響いた度: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2022年9月

 

ピース又吉の好きな作家である京極夏彦 (Wikipedia情報) の小説を図書館で探したところ、文庫本で1000ページくらいある超長編のものが殆どで、ハードルが高かったので、一番文字数の少なそうなものとして読んだ。

 

アサミという若い女が死んだ数ヶ月後、ケンヤという若い男が、アサミと関わりの会った人間のもとを訪れる。アサミのことを教えてくれという。ケンヤはアサミと4回会ったことがあるだけのただの知り合いで、何のためにそんなことをするのかは分からない。

 

ケンヤは学が無くバカで定職もなく言葉遣いもなっていないチンピラみたいな男だ。ケンヤと会う人間は全員ケンヤを見下している。読者もそう思って読んでいる。ケンヤはアサミの関係者、例えば会社の元上司、隣人の女性、ヤクザ、母親に会う。端的に言って彼らはアサミを弄んで生きてきた。アサミが死んで悲しんでいる人間は一人もいない。彼らから語られるアサミの人生はひどいものだ。それなのに彼らは自分の人生こそがひどいものだと思っている。ケンヤにはそれが分からない。ケンヤからすれば、彼らはそれなりの人生を送っているし、彼らの人生がひどいとすれば全部自分のせいだ。そしてケンヤからすれば、アサミは彼らが語るような不幸な人間には見えなかった。ケンヤにはそれが分からない。だからケンヤは彼らに言う、死ねばいいのに。

 

バカでストレートなケンヤの言葉が胸に刺さってきて、幸せってなんなのかということを考えさせられる。