ヘルドッグス 地獄の犬たち

  • 著者: 深町秋生
  • 心に響いた度: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2022年12月

 

ヤクザに潜入した警官の話。親戚が貸してくれて読んだ。

 

警察官である出月梧郎が、兼高昭吾の名前で関東最大の暴力団である東梢会に潜入する。潜入というのはスパイとはまた違って、実際に本当にヤクザになるものであって、顔も整形して、経歴もでっち上げて、(不動明王の) 入れ墨も彫る。それで、ヤクザになったからには、ヤクザとして振る舞うので、非合法なシノギとか、武力抗争もしまくる。というか、十朱に近づくためには会の中で名を上げることが必須なので、率先してヤクザ行為に手を染めないといけない。

 

でもって、兼高の役回りはキラーであり、平たくいうと殺し屋であり、相棒の室岡とともに、抗争相手をトルクレンチでぶっ殺すシーンから小説が始まる。

 

出月の目的は、東梢会会長である十朱を抹殺することだ。十朱は実は、もともと兼高と同じ潜入警察官であり、ある日突然、警察を裏切って本物のヤクザになった。十朱は潜入時代の警察とのやり取りを全部保管しており、警察からすると核ミサイルのボタンを握られているような状態になっていて、うかつに手を出せないという、チート級のキャラ設定となっている。

 

で、兼高の上司で、組織犯罪対策部特別操作隊の隊長である阿南は、十朱が潜入捜査していたときに警察側でバディを組んでいて、十朱の裏切りによって結果的に死んだ (自殺に見せかけて殺された) 木羽の親友であり、十朱を消すためには手段を選ばない、碇ゲンドウばりに冷酷かつ謎の多い存在となっている。

 

小説のタイトルにある犬とは、たぶん警察官のことで、これが複数形なのは兼高、十朱、阿内の三人が三人とも、地獄に生きていることを象徴していると思われる。

 

残虐な拷問のシーンがかなり多く、十朱を狙う女スパイを拷問するところとか、阿内がヤクザに拉致されるシーンとか、どうやって映像化したんだろうかという点が気になるくらい暴力的である。ヤクザの小説は全部そうなのかもしれないが。

 

また、兼高の生き様が地獄的すぎて、映画での兼高役が岡田准一というのがイマイチピンとこない。といった感じで、基本的には映画より原作派なのだが、映画版も気になる一冊になった。