小松とうさちゃん

  • 著者: 絲山秋子
  • 心に響いた度: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年1月

 

蓄電会社で働く宇佐美と、大学の非常勤講師である小松という二人のオッサンの友情の話。

 

宇佐美は家庭を持っていて、2人の子供がおり、会社でもそれなりの立場にいて、リア充っぽい感じなのだが、一方で信長の野望っぽい感じの戦略シミュレーション系ネットゲームにハマっていて、というか成り行きでそのゲーム上で盟主ぽい立場になっていて、辞めるに辞められない状態になっており、会社でもプライベートでも無駄に責任を押し付けられている感じで苦労の多い、将棋のコマみたいな四角い顔のオッサンである。

 

一方で小松は、複数の大学で5コマの講義を掛け持ちする非常勤講師であり、1コマあたりの月給は3万円であり、将来的な出世も見通せないという、傍から見ると人生の負け組っぽい感じのオッサンなのだが、ふとしたきっかけである女性と出会い、いい感じに熟年恋愛を楽しんでいる、味のあるオッサンである。

 

物語は、一人称が上記2名を含む複数の人物に切り替わりながら進む、伊坂幸太郎的なスタイルなのだが、1-2ページくらいで一人称が切り替わっていくこともあり、展開が早い。

 

居酒屋の飲み友達という古典的な関係性に、ネットゲームとか、「見舞い屋」という怪しいビジネスに関わる人間関係が混じり合って物語が進む感じが、新鮮で面白い。

 

文章量は多くないけど、小松とみどりの描写がすごくいい。相手に好意を持ちつつ、かつ相手が自分に好意を持っていることを知りつつも、素直に前に踏み込めない50代のもどかしい感じが描写されている。女性の心理理写がやっぱりいいなと思う。