5(ご)

  • 著者: 佐藤正午
  • 心に響いた度: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年1月

 

永遠に冷めない愛はあるかをテーマにした、ある女の記憶術についての話。

 

石橋というパーツモデルの女性は、見ただけで言葉をすべて記憶できるというフラッシュメモリー的な能力を持っている。彼女はこれを記憶術と呼んでいる。ただ記憶はできても意味の理解ができなくなる (言葉が溢れてきて思考に集中できなくなる) という弊害がある。石橋は自分のこの能力を持て余している。

 

で、この記憶術は、他人に受け渡すことができる。手のひらを他人と合わせると、能力が受け渡される。ただし、その能力は受け渡された相手によって性質が変わる。また、誰にでも受け渡せるわけではなく、相性みたいなものがある。また、なぜかわからないが、1ヶ月くらいすると相手の能力が消えて、石橋に戻ってくる。

 

妻を愛せなくなった中という中年サラリーマンが、偶然石橋と出会って、この記憶術を引き受け手になる。中の記憶術は、妻を愛したときの記憶、というか感情そのものを思い出すというものである。で、中は妻への愛を取り戻して、睦まじく生活しようとするのだが、実はその妻が津田伸一という小説家と不倫していて、その不倫に気づいて、また記憶術によって昔のいろんな記憶がごちゃごちゃに蘇ってきて、いろいろ大変なことになる。

 

で、いろいろあって、最終的に、津田が記憶術の引き受け手になる。津田は行きずりの女をとっかえひっかえして生活する、シニカルで端的にいうとすごく嫌な奴なのだが、いろいろあって落ちぶれて、最終的に、記憶術によって、自分の生き方を決める。

 

記憶術の発現が人によって変わる、というのが物語の肝になるのだが、その原理がよくわからないので、何となく腑に落ちないまま読み終わった。それでも面白かったと思えるのは、津田伸一のキャラクターが面白いからだと思う。

 

物語の性質上、たくさんの女性がでてくるのだが、いちばん人気を集めるのは、やはり、長谷まりだろう。