我らが少女A

  • 著者: 高村薫
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年7月

 

登場人物が思春期の時期に起こった殺人事件を、大人になってから回想し、新しい真相にたどり着いていく話。

 

高校の美術教師を退職した後、自宅で絵画教室を開いていた老女が、武蔵野の川辺で殺害された事件は、被疑者不明のままお蔵入りとなっていた。事件から10数年後、当時の絵画教室に通っていた朱美が同棲していた男に殺害される事件が発生し、その捜査の中で、朱美が当時事件現場に立ち寄っていた可能性が浮上し、捜査が再開する。当時の捜査責任者だった合田は、現在は事件現場の近くで警察学校の教師をしており、個人的に事件の再捜査を進めるうちに、当時の未成年が抱いていた本当の思いを知ることになる。

 

乱暴に言ってしまうと、老女の殺人事件で明確な悪意を持っていた人間はいなくて、思春期の未成年たちの焦燥感、嫉妬、諦観、絶望、希望とかが入り混じった結果、一人の人間が殺されるに至った、というような描写がされている。

 

事件の真相は、ADHDである浅井忍によって明らかになるところが多いのだが、浅井忍の感情や行動が、彼の脳内フィルターを通して描かれており、ADHDの未成年に世界がどのように写っているのかということを、ほんの少しだけ理解できる気がする。老女の殺人事件の再捜査に巻き込まれる中で、他者や外界と断絶されていた浅井に変化が生じて、クリスマスイブの朝に送ったメールはちょっとグッとくる。