KAGEROU

  • 著者: 齋藤智裕
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年8月

 

水島ヒロこと齋藤智裕のデビュー作であり、ポプラ社小説大賞を受賞したことによって小説以上の存在に進化した小説。

 

人生に絶望して、自殺を図ったヤスオは、キョウヤという男に自殺を引き止められる。キョウヤは臓器移植のコーディネーターであり、ヤスオをうまく説得し、ヤスオを (本人合意のもとで) 殺し、彼の臓器をレシピエントに提供しようと暗躍する。ヤスオは自分の死後に残される人のために臓器提供をして死ぬことを決意するが、途中のすったもんだで臓器移植をためらったり疑問を持つようになりつつ、結局は臓器移植に合意するのだが、ひょんなことから本来は臓器移植の対象ではなかった脳もある人物に移植されることになり、ピッコロと同化したネイル (またはその逆) のような感じで、新しい人生を生きていく。

 

文章表現とかは荒削りで若干滑ってるところもあったが、物語の構成がしっかりしていて面白かった。ただ臓器移植のために利用される医療技術が若干非現実的であり、そこの説明が「UAEで生み出されたスーパー技術」みたいな感じでしか説明されていない点に違和感を覚えた。自分とそっくりの人形を作って、それを死体として家族に見せることでヤスオが死んだことを理解させる (それによってヤスオの生身の肉体を臓器移植に使えるようにする) というくだりがあるのだが、山に登って死んで死体は行方不明 みたいな理由にしてしまった方が、リアリティがあったのではと思った。

 

「全ドナーレシピエント協会」の組織名は、「全ド協」という略称のインパクトを小説内のネタとして一発入れたかったためにつけたのではないかと想像する。