• 著者: 佐々木譲
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年10月

 

15年前に起こった花街での殺人事件を再捜査する話。

 

会議中に上司に暴言を吐いた的な不祥事によって謹慎中だった捜査一課の水戸部が配属されたのは、未解決の重大事件を捜査する特命捜査対策室だった。水戸部はそこで、15年前に新宿の荒木町で起こった、元芸妓の女性が殺害された事件を、当時の捜査責任者で現在は定年退職し相談員となった加納良一と再捜査する。

 

当時の捜査では参考人すら挙がらなかったという未解決事件であり、水戸部の捜査の大半は、荒木町に今も住んでいる当時の関係者に話を聞くというものだ。水戸部と加納は、足繁く荒木町に通って人々の話を聞く中で、15年前経った今だからこそ分かる事実、人間の機微を少しずつ集めながら、事件の真相に迫っていく。

 

水戸部の捜査は、捜査というよりは世間話に近い。花街であることから、関係者の多くは飲食店の関係者である。水戸部の店に立ち寄ってビールを飲みながら話を聞く。その後別の店に行き、得た情報を他の人にぶつけて反応を伺い、その反応から気づいたことをまた別の人に問うてみる。そんな感じで、あくまでも非公式に、頭の中で仮説を組み立てていくような感じだ。会話の機微みたいなものが繊細に描かれていて、行間を読むのが面白い小説だと思った。