The Lean Startup

  • 著者: Eric Ries
  • 印象: 3 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年3月

 

3年くらい前から読もうと思っていて、半年くらい前から読み始めて、原書で読んだので無駄に時間がかかり、時間短縮のために日本語訳版を購入したところ、翻訳に若干の違和感があり、読むのに抵抗が生じたため、結局原書を読んだ。

8年くらい前に書かれた本で、これに変わる新しいマネジメントの概念が出てきたりしてるような噂も聞くが、僕としては大変参考になった。

 

圧倒的に不確定要素の大きい (Extreme encertainty) 状況で事業を立ち上げるための「科学的」なアプローチを説明した本。科学的というのは、経営学とか経済学の理論に立脚したという意味ではなくて、仮説検証にもとづいて、といった意味で使われている。この仮説検証のサイクルを、Build-Measure-Learnという言葉で表現している。

Build-Measure-Learnが一般的に使われているPlan-Do-Check-Act (PDCA) と違うのは、サイクルを回す目的はあくまでも学び (Validated Learning) を得ることであり、自分が欲しい結論や、一見会社が成長しているように見える指標 (新規顧客登録数とか) を使うことで、「検証した気になる」ことを厳に戒めている。

適切に学びを得る (Learn) ためには適切な評価を行う (Measure) ことが必要で、その評価を行うことを目的とした最小限のプロダクトを作る (Build) というのが基本的な考え。このプロダクトのことをMinimum Viable Productと読んでいる。

研究開発で一般的にやられている仮説検証のサイクルをビジネスに置き換えた結果がBuild-Measure-Learnである、という風に考えると、とてもわかりやすい。

 

言われてみれば当たり前にも聞こえる内容で、普段から研究やってる人からすると、そんなん当たり前やろと言われそうだが、それをフレームワーク (と言っていいのかわからないが) として整理して、実践し、成果を確認した上で本にまとめているところがすごいところだと思う。

「とりあえずやってみる」とか、「走りながら考える」とかいう、一見すると同じに見える考え方と明確に一線を画している。

というか一線を画すんだということを一番最初にはっきり伝えるために、自身が立ち上げたスタートアップが頓挫するところから本が始まるのも、著者の思いが伝わっていい感じだと思う。

 

プロダクトの修正が比較的しやすい (と思われる) IT関係の事例に基づいて説明されているので、ものづくりの世界では同じようにやっても難しいように思う。ただリーンスタートアップの元ネタはトヨタ生産方式 (Lean manufacturing) であることからすると、多分ものづくりの仕事にも適用できるはず。

 

とりあえず、Work Rules! とこの本を踏まえて一番大事なことは、学ばない組織は死ぬ ということだと思った。