パラドックス13

  • 著者: 東野圭吾
  • 印象: 1 (1-3)
  • 読んだ時期: 2020年8月

 

超常現象的なものに巻き込まれた結果、生物が消えてしまった世界に取り残された人々が生き残るために色々頑張る話。

 

取り残された人々とは、具体的には、警視、所轄の刑事、会社役員とその部下、フリーター、ヤクザ、赤ちゃん(以上男性)、看護師、主婦とその子供、高校生(以上女性)、と老人夫婦の13人。

 

人々が取り残された世界は宇宙の矛盾的なものを抱えているらしく、火災、地震、洪水、地盤沈下など災害が同時多発的に起こっており、人々を殺しにかかってくる (様な意思を持っているような描写がある)。何人かは災害に巻き込まれてしまう。また、当然電力や食料、治療薬も入手が難しく、それに付随する様々な問題が発生する。

 

警視の誠也は混沌とした状況の中で、弟の刑事である冬樹とともにメンバー全員の生存のために力を尽くすが、あるきっかけで自分たちが巻き込まれた超常現象がどんなものかを知り、愕然とする。日を重ねるごとにメンバーから発せられる「そもそもこの世界で生きることに何の意味があるのか」という根本的な問いに対して、答えを出せず悶々とする。メンバーは自分なりの生きる (または死ぬ) 目的を見出そうとし、心理的、物理的に少しずつ分裂していく。そんな中で、超常現象的なものが数日後にもう一度発生することを知る。

 

というのが基本的なあらすじとなる。

 

メンバーや、起こる事件が多様で、息つく暇もない感じだった。状況設定的に、ありとあらゆる混乱が起こり得るのだが、その中の一部を任意に取り出し、断片的に描いている感じで、またその描写も頻繁に起こる地震や洪水によって、中途半端な状態で強制中断されている様な感じがあり、若干の消化不良感を抱えたまま読み終えた。

 

また、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の時もそうだったが、時間が関係する超常現象は、どういう理屈なのかとか、どこかに矛盾があるのかないのかが気になってしまい (今回の場合、その矛盾が現象の本質っぽいのだが)、本作でもそのへんが気になって集中できなかった。本の中盤くらいで超常現象の内容が明かされるのだが、気になったので途中を読み飛ばしたが (あとで読み直した)、結局よく分からず、上記とは別の消化不良感が残った。

 

人は何のために生きるのかというテーマを語るために、あえてものすごく極端な設定をして、思考実験を行ったような作品であると感じた。

 

個人的には、超常現象によって取り残された人々だけでなく、取り残されなかった側の人間が、その超常現象までに何を考え、準備し、行動したのか、あるいは取り残された人間とその後どのような関わりがあったのか (または無かったのか) が描かれたらもっと面白いのではと思ったが、超常現象の性質的に難しかったのかなと感じた。

 

ちなみに主人公(的な人物)が警察関係者だが、物語の中で殺人事件が発生し、その犯人を推理するという展開にはならない。