読書感想文: 「悪」と戦う
「悪」と戦う
- 著者: 高橋源一郎
- 印象: 1 (1-3)
- 読んだ時期: 2022年3月
高橋源一郎のラジオで紹介されていた小説および小説家の作品を読むにあたり、紹介してる人がどんな人なのかを知るために借りた。
超平たく言うと、選ばれし者が悪と戦って世界を救う話。ただ、ここでいうところの選ばれし者とは、ちょっと変わった3歳の子供で、悪というのは実態があるわけではない。実態が無い悪なので、戦うという概念も、相手をぶっ倒すというものではない。
背景にある主張は多分こんな感じ。世界というのは非常に脆弱であり、放っておくとすぐに壊れてしまう。壊れるというのは概念的なもので、不条理とか暴力とかいったものに埋め尽くされていくという感じ。で、実は世界には、人知れず世界が壊れないように戦っている人がいる。戦うというのは概念的なもので、不条理とか暴力とかいったものに晒されながら、人間的に生きることをいう。いろんな人が不条理や暴力に立ち向かうことによって、世界は危うい均衡を保つことができている。そんな感じ。
読んでいて、どこかで聞いたことがあるような物語だと思った。ちょっと違うかもしれないが、村上春樹の海辺のカフカのモチーフを組み替えたみたいな。別にこの話を、悪と戦う、という主題で書かなくてもよいのではという気がした。逆に白々しい感じがする。
また、文章表現が童話的で、宮沢賢治の小説とか、ミュージカルの台本とか、国語の教科書を読んでいるような感じがあり、僕が宮沢賢治の文章があまり好きではないのも相まって、読んでいてちょっと辛かった。
ゴーオンジャーとか、アルカイダとか、アンジェリーナジョリーとか、実在する固有名詞が所々にでてくるのだが、別に固有名詞を出す必要が無いような場面ででてくるので、ただ単にこの言葉を言いたいだけなんじゃないか、という気がした。
タイトルからあとがきまで、全体的に思わせぶりな表現が多くて、白々しさが最後まで消えない感じだった。