読書感想: レディ・ジョーカー
レディ・ジョーカー
- 著者: 高村薫
- 読んだ印象: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2023年6月
競馬場でつるんでいた何人かのおじさんがビール会社を脅迫する話。
物井は70歳くらいの老人で、小さな薬局を経営しながら、休みの日に競馬場に行くことだけが楽しみの生活を送っている。物井と、物井の娘の夫である秦野は被差別部落出身であり、部落差別を発端として秦野の夫が自殺したことをきっかけに、特に明確な目的もないまま、競馬仲間と一緒に、秦野の自殺に間接的に関わった大手ビール会社 (日の出ビール) の社長である城山の誘拐と、20億円の強奪を企てる。
犯人である物井とその仲間、被害者である城山と日の出ビールの関係者、犯人を捕まえようとする警察、事件を報道する東邦新聞、それぞれの立場から誘拐とその後の脅迫を描写しており、人によって読書の重心が変わってくるように思う。
誘拐事件と脅迫事件は、物井らの意図とは別のところで、暴力団、総会屋、エセ部落差別団体とかいった、根深い社会の闇的なものと結びついていて、登場人物たちは、様々な形でその社会の闇的なものに振り回される感じがある。その中で物井とその友人であるヨウちゃんだけが超然としていて、印象深かった。ラストシーンも個人的に好きだった。
登場する女性の大半はヒステリックであり、その中で城山を影から支える秘書の野崎孝子のしとやかさが際立つ。
小説中にほんの少しだけボーイズラブ的な展開があるのだが、高村氏はボーイズラブ要素が好きなんだろうか。