宝島

  • 著者: 真藤順丈
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年7月

 

戦後、米軍基地と日本政府に挟まれて生きる沖縄のコザ市で、英雄的な人間だったオンちゃんを慕って生きてきた幼馴染の3人の話。

 

オンちゃんは戦果アギヤー (米軍基地から物資を盗む人々) として伝説的な存在であったが、ある時沖縄で最も大きな基地の一つである嘉手納基地に大規模な襲撃を仕掛け、そのドサクサの中で行方不明になってしまう。襲撃に参加していたオンちゃんの弟であるレイ、オンちゃんの親友であるグスク、基地の外でオンちゃんの帰りを待っていた恋人のヤマコは、オンちゃんの生存を信じてそれぞれの立場で捜索をはじめる。

 

3人が住むコザ市は米軍基地に隣接した街で、米軍基地とは切っても切れないつながりがある。人々の多くは米軍基地関係の仕事についており、米軍基地が生活の基盤になっている一方で、一部の米兵による暴行にいつもさらされている。米軍基地にまつわる様々なイザコザを経て、何度か死にかけたりしながら、オンちゃんを失ってから、親友とも呼べる関係にあった3人の関係も少しずつ変化していき、レイはヤクザに、グスクは警察に、ヤマコは沖縄返還の運動家になって、それぞれの立場で沖縄を守るために奔走する。

 

襲撃後のオンちゃんの消息は不明で、オンちゃんを探すことが小説の1つのテーマになっているのだが、冒頭でのオンちゃんの描写が少なく、オンちゃんが3人の人生に与えた影響が十分理解できないので、3人がなぜそこまでしてオンちゃんにこだわり続けるのか、ということを読んでいて見失いがちになる。ヤマコについては結構描写があるのだが、小説全体の9割はオンちゃんがいなくなってからの話なので、読者側からするとオンちゃんへの感情移入が十分できず、登場人物がオンちゃんに抱く感情に共感することが十分できない感じがあった。

 

物語はレイ・グスク・ヤマコをいったり来たりする感じで進み、全体的に内容が盛りだくさんで消化しきれない感じがあった。後から調べて分かったのだが、小説の構成は、コザ市で実際に発生した事件や運動の史実に準拠しつつ、オンちゃんにまつわるグスク、ヤマコ、レイの物語を載せていくという構成になっていて、そのために内容盛りだくさんになっているのだろうと思った。

 

小説のタイトルは、戦果アギヤーが持ち帰る戦利品を比喩したものでありつつ、物語の最終盤でそれが意味するところが示唆させるのだが、言わずもがなの内容にも思えて、敢えて語らないほうが良かったのではという気もした。

 

ヤマコのイメージとしては、黒島結菜と南海キャンディーズのしずちゃんをまぜこぜにした感じとして読んだ。