読書感想: 少年と犬
少年と犬
- 著者: 馳星周
- 読んだ印象: 3 (1-3)
- 読んだ時期: 2023年8月
東日本大震災に被災し、飼い主を失った犬が、自分を愛してくれた人間に再会するために、東北から九州までを旅する話。
犬の名前は多聞という。多聞は旅の途中で様々な人間に拾われる。拾った人間は彼/彼女を多聞と呼んだり、別の名前で呼んだりする。人間に拾われたとき、多聞はたいてい汚れて飢えている。多聞は気高い犬で、人間に施しを受けても完全に心を許すことはない。一時的にその人間と暮らしても、その人間の所有物になることはない。多聞を拾う人間は、大なり小なり問題を抱えていて、多聞を救ったつもりが、いつの間にか多聞に救われている。多聞はその人間の最期を見届けては、目的地に向かって断続的な旅を続ける。
多聞が人間を救えるのは、多聞が人間ではなく犬であるからであって、その人間と犬の関係性が大変素晴らしく描かれている。