• 著者: 深尾三四郎、クリス・バリンジャー
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2023年11月

 

KRIのワークショップに参加した際、著者の深尾氏の講演を聞いて、改めてブロックチェーンとモビリティの関係性について興味を持ったので、Amazonで買って読んだ。ちなみに深尾氏はその知見と話しぶりから、5-10歳くらい年上だと思っていたが、経歴を見たら同い年であり、びびった。

 

ブロックチェーンの技術的な内容は未だによく分からないが、要するにノード同士の取引の信頼性を担保できる仕組みであって、これを使うと人間同士だけでなく機械同士も自律的に契約し、価値を交換しあえるようになるという点が重要であるということだった。利便性が向上することも重要だが、取引の信頼性を仕組みとして担保できているという点が重要である。自律的な価値交換ができるようになると、今まで価値として認められにくかった、利他的な個人の行動 (思いやりとか、おもてなしとか) に対して、対価を提供できるようになり、それによって個人の行動変容を促しやすくなる というのが、ブロックチェーンを推進する人たちが描く社会の変化である。

 

本書ではブロックチェーンの技術的な内容の記載はほとんど無く、上記を前提として、ブロックチェーンによって都市や車がどう変わっていくか、という点を、著者が所属するブロックチェーンのコンソーシアムであるMOBIの取り組みを事例として紹介している。

 

目指しているのは脱炭素であり、自動車にブロックチェーンを実装することで、ドライバーもしくは自動運転車のユーザーに脱炭素に資する行動を促す。また、車の生産者に対して、循環型経済に資する生産活動を促す。

 

ブロックチェーンの特徴に、中央管理者が不要、というものがあり、これによってGAFAのような巨大企業による価値の独占を防げる という記述があったが、ブロックチェーンの信頼性はマイナーの計算能力に因っているので、例えば超巨大計算能力を持つマイナーが計算能力を寡占したときに、信頼性を担保し続けられるのか、といった、ブロックチェーンの脆弱性がどこかにあるように思うが、よく分かっていない。