• 著者: ウォルター・アイザックソン
  • 読んだ印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年2月

 

ゲノム編集技術であるクリスパー・キャス9の仕組みを発見し、2020年にノーベル賞を受賞した女性研究者である、ジェニファー・ダウドナの半生を綴った本。

 

アイザックソン氏の伝記的な本を引き続き読みたかったのと、クリスパーシステムに関する理解を深めたかったという理由で、図書館で借りて読んだ。

 

とりあえず自分用にまとめておくと、クリスパーシステムというのはもともと、細菌が持っている免疫システムみたいなもので、過去に感染したウィルスのDNA配列を自分のDNAに組み込んでおいて、再び同じウィルスが侵入してきたときに、組み込んだ配列を標識として、ウィルスのDNA配列を酵素で切断することでウィルスを殺す (生命じゃないけど) 仕組みのこと。この仕組みをうまいこと利用すると、改変したいDNA配列を切断して別の配列に置き換えることができる、つまりDNAを編集できるようになる。

 

DNAを編集できる技術なので、例えば生殖細胞にクリスパー技術を適用すると、編集箇所は子世代にも受け継がれることになる。つまり人類が自らの手で自分のゲノムを編集する力を手に入れたことになる。このあたりの基本的な技術を発明したのがジェニファー・ダウドナとのことらしい。

 

ダウドナの半生が書かれた本ではあるけど、クリスパーシステムの研究に取り組む様々な人間がダウドナとの関わりの中で登場する。世界を変えるようなとんでもない技術は、生命の仕組みを知りたいという純粋な好奇心に基づく様々な人間による研究から生まれるということが読んでいるとよく分かるし、また著者が本書を通して伝えたいことの重要な一つなのだと思う。

 

人類は将来、自分や自分の子供のゲノムを編集して、望む外見や能力を得られるようになる可能性が高い。その技術が本当に現実のものになる前に、その技術をどこまで適用するのか、という点をちゃんと決めとかないとえらいことになりそうだ。