読書感想: 虚ろな十字架
- 著者: 東野圭吾
- 読んだ印象: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2024年3月
通り魔的な殺人によって娘を殺され、その後さらに別の事件によって妻を殺された男が、妻の殺人事件を解明していく話。
死刑制度が話の全体に関わるテーマになっている。話の中には、殺人を犯し死刑執行をされたが本当の意味での贖罪を果たさなかった人間、殺人を犯したものの無期懲役となりその後釈放された人間、殺人を犯しながらも司法に裁かれなかったものの罪の意識から壊れてしまった人間、同じく殺人を犯して司法に裁かれなかったが贖罪の意識から他人の命を救うことに人生を捧げた人間、などが出てくる。
殺人を犯した人間の贖罪と更生、殺された人間の遺族にとって死刑制度がなんであるかということが描かれている。答えはない。
話の中で、娘を殺された母親が、その後ジャーナリストとなり、死刑制度についての本を執筆するのだが、その本の一部が登場する。それはこういうものだ。
「子供を死刑制度反対論者にすることは簡単です。法律によって殺人は禁じられている。死刑制度とは国による殺人である。ところで国は人間から成り立つものだ。だから死刑制度は法律に反している。私はこの説明を疑いなく受け入れられる人間でいたかった。」
話の中で、中学生がある人間を殺してしまった過去が明らかになるのだが、どうして殺人を犯す前に学校でばれなかったのか、そもそも良識がありそうな中学生なのにどうして踏みとどまることができなかったのか、という点がちょっと不自然だなと思った。親の視点からすると、こんな事件が起こってしまう可能性を考えると恐ろしい。