• 著者: 三浦しをん
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年6月

 

島で起こった大津波から生き残った3人の子供のその後を描いた話。

 

美浜島に住む中学生の黒川信之は、美しい島の自然を愛しながらも、島民がほぼ全員知り合いで、お互いがお互いを監視し合うような閉塞感を感じながら暮らしている。娯楽らしい娯楽もない生活の中で、信之は唯一の同級生である美花と付き合っており、美花の両親が経営する旅館のバンガローに忍び込み、灯台に住み着く謎の老人から大人に内緒で買い付けたコンドームを使って、逢瀬を重ねている。信之は遠縁にあたる佑という年下の少年から慕われており、佑は毎日金魚の糞のように信之について回っている。佑は父親に日常的に暴力を振るわれており、時折見せる佑のすがるような目に、信之は哀れみと鬱陶しさと軽蔑を感じている。佑は信之が美花とバンガローで会っていることを知っており、ことあるごとにその話を持ち出しては信之の気を引こうとする。

 

ある夜に、信之は美花に会いに神社に向かうと、佑に見つかり、佑も一緒についてくる。高台にある神社に3人が到着すると、何の前触れもなく大津波が島を襲い、島が一瞬で壊滅する。生き残ったのは、3人と、佑の父親、灯台の老人、美花のバンガローに宿泊していた旅行客の山中。信之、美花、佑が島を離れる前日の夜に、美化を襲う山中を見つけた信之は、山中を殺し、崖に放り捨てる。佑はその現場を目撃し、信之に罪が及ばないよう、証拠隠滅のために山中の靴を別の場所に捨てる。

 

島を離れた3人は、全く別の人生を送っていたが、佑は執拗に信之を探しており、山中殺しをネタにして信之を脅迫している。信之は、自分の妻が佑と不倫していることを知りながら、平然と毎日を送っている。ある日、佑のもとに彼の父親が現れ、山中殺しをネタにして佑に金をせびるようになる。金に困った佑は、女優になった美化に脅迫のターゲットを切り替える。それを知った信之が、自分の中の内なる暴力を少しずつ解き放っていく。そんな感じで、島の災害を生き延びた人間の人生が再び交錯することになる。

 

凄く引き込まれる話だった。ただし全体的に救いが全くなかった。小説全体で語られるのは暴力である。タイトルが「光」となっているので、最後になにか起こるのかと思ったら、そういうことはない。暴力の連鎖は小説が終わった後も続いている感じがした。