読書感想: まほろ駅前狂騒曲
- 著者: 三浦しをん
- 読んだ感じ: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2024年7月
便利屋を営む二人の男の話。
東京都にある多分架空の都市、まほろ市の駅前で便利屋を営む多田のもとには、高校時代の同級生である行天が居候している。行天は高田純次ばりにテキトーな男で、便利屋稼業を手伝ったり手伝わなかったりしながら、でもピンチのときに意外と男気を見せたりして生きている。行天は子供時代にトラウマを抱えており、そのせいで子供と関わることを死ぬほど恐怖しており、妻との間に子供ができるとそのまま離婚してしまった過去を持つ。
ある日、多田の元に行天の元妻が現れて、行天との間にできた4歳の娘 (はる) を1ヶ月半預かってほしいと頼まれる。行天が子供と関わることを恐怖していることを知っている多田は頼みを断ろうとするが、いろいろあって引き受けざるを得なくなり、多田、行天とはるの3人の生活が始まる。一方で、多田の周囲では、怪しい無農薬野菜を売りつける団体とか、その無農薬野菜と反目するヤクザまがいの男どもとか、バス会社の間引き運行を糾弾しようとするジジイの集まりとかが怪しい動きを繰り広げ、ふとしたきっかけで駅前広場で騒動が起きる。その騒動の中で、多田と行天は自分が大事にするもののために行動する。
全体的に、前半で張られた伏線が駅前広場での騒動に結びつく感じで、一見関係ないように見えるいくつかの出来事が駅前広場でつながっていく感じになっている。話の展開は伊坂幸太郎のそれに似ている感じもあるのだが、物語の中心に、不器用な男が持つ子供への愛みたいな感じのテーマが据えられている。伏線が回収されていくミステリの爽快さというよりも、行天がはるへの愛に目覚めながら、それを不器用に表現していく感じが迫ってくる感じでよかった。
直木賞受賞作品 (まほろ駅前多田便利軒) の続編に当たる作品と思われるが、特に行天の存在感が際立っており、行天のスピンオフ作品みたいな位置づけと思われる。
小説中に何枚かイラストが掲載されているのだが、多田と行天が男前過ぎて物語中の無骨さ、変人さが感じられず、ちょっと違和感を感じた。