• 著者: 真保裕一
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年9月

 

日本最大の貯水量を誇る奥遠和ダム発電所の運転員である富樫輝男は、遭難者を救出するために、親友の吉岡と猛吹雪の山中に向かうが、そこで自分たちも遭難してしまい、不運と自分のミスもあって吉岡を死なせてしまう。

 

それから数か月後、吉岡を弔うために奥遠和ダムを訪れた千晶は、同じタイミングで発生したテロリストによるダム占拠に巻き込まれ、他の運転員とともに人質に取られてしまう。富樫はその日非番だったが、千晶に吉岡の最期を伝えるために、たまたま発電所に残っていた富樫は、間一髪のところでテロリストの攻撃を逃れた後、吉岡の恋人が人質に取られていることを知る。テロリストを阻止し、千晶を救うために、富樫が雪山で壮絶に孤軍奮闘するというのがあらすじ。

 

奥遠和ダムは豪雪地帯にあり、シルバーラインと呼ばれるトンネル道が麓と行き来するための唯一の経路なのだが、テロリストは爆弾でトンネルをふさぎ、ダムを陸の孤島状態にする。11人の人質と近隣のダムの電力を支配したテロリストは、警察に対して圧倒的に優位な立場にいるのだが、富樫の超人的な行動力と、テロリスト間での仲間割れもあったりして、徐々に焦りを募らせる。

 

富樫には、雪山のテロ事件で考えられる、あらゆる苦難が降りかかる。それは例えば、銃撃、テロリストとの対峙、酸欠、雪崩による生き埋め、空腹、夜間の単独雪山歩行、水中移動など、雪山のテロ事件で考えられうる、しかしながら、親友の大切な人を今度こそ救うというその一心で、苦難を一つずつはねのけていく。その姿はもはや超人でしかない。

 

千晶は人質に囚われた唯一の女性であり、テロリストの食事を作る役割を担わされているのだが、極限状態にも関わらず色々と理解が早い女性で、僕なんかよりもずっとダムの構造やテロリストの状況を理解している。ラストシーンの近くで、テロリストの一人が千晶とスノーモービルで移動する場面にて、めちゃくちゃ丁寧にテロリストの仲間割れの理由を説明してくれるのだが、計画がいろいろと複雑で理解が追い付かなかった。

 

テロ事件が発生した冒頭は、話の成り行きで、テロリストの名前がなく、服の色と身体的特徴だけで人物が描写されているため、誰が誰だか全くわからない。実際にテロ事件に遭遇したらそうなるものなのだろうが、もうちょっと分かりやすくしてもらえるとよかった。