• 著者: 鳴海章 / 桐野夏生 / 野沢尚 / 三浦明博 / 赤井三尋
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年10月

 

江戸川乱歩賞を受賞した作家の短編集。推理小説というよりは普通の短編集に近い感じがした。

 

桐野夏生の「グレーテストロマンス」は、恋人を殺した男が、自分を通報した女に対して異常な思いを抱きながら刑務所で過ごす日々を描いた話で、最後に話の顛末に男の妄想が混ざっていることが分かるのだが、どこからどこまでが現実で、どこからが妄想だったのかが分からなくなる。

 

野沢尚の「ひたひたと」は、少女時代に出会った年上の中学生との嫌な記憶を引きずり続けている女性が、大人になってからその男と再会して、その息子を使って意外な形で復讐するという内容で、続きを書くと官能小説になるくらいの淫靡さがある。

 

赤川三尋の「秋の日のヴィオロンの溜息」は、明治維新後の日本を訪問したアインシュタインが、愛用のバイオリンを盗まれるという事件を、早稲田大学の教授が華麗に解決するという話で、 (読んだことないけど) シャーロック・ホームズとか名探偵コロンボみたいな感じの古典的な哀愁を感じる。事件には、世界を股にかけてる感じの盗賊コンビとか、徳川家の末裔が関わってきたりして、フィクション感がすごい。物語の終盤において、追い詰められた犯人と教授との間の会話を通して行われる種明かしのシーンは、 (読んだことないけど) シャーロック・ホームズを彷彿とさせる。一番推理小説的だったが、設定や登場人物にリアリティが感じられず個人的には桐生夏生とかの作品の方が楽しめた。三谷幸喜とか宮藤官九郎が映画化したら面白いのかもしれない。