• 著者: 桐野夏生
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年11月

 

東日本大震災で福島原子力発電所が核爆発を起こし、東京より東側に人間が住めなくなったパラレルワールドの話。

 

ブラジル日系二世の娘として日本に生まれたミカは、両親の仲違いをきっかけにして、ドバイの人身売買マーケットに売られ、バラカと名付けられる。バラカは日本で出版会社に勤める木下沙羅に買われ、光と名付けられる。自分になつかない光に失望した沙羅は、光を友人である優子に引き渡す。優子と東京で過ごしている間に東日本大震災が発生し、核爆発が起こる。その直後、優子の前に沙羅の夫である川島が現れ、光を強引に拉致する。川島は遺産相続の関係から沙羅の養女である光が邪魔であり、光を殺すために福島に捨てる。光はその後も生きて、被災地でペットの保護活動をしていた豊田という老人によって保護される。

 

豊田に保護されたミカは薔薇香と名付けられ、全国を転々としながら豊田と暮らす。数奇な運命をたどって福島で保護された薔薇香はいつの間にか脱原発、被災者の象徴になっていて、薔薇香のもとには、薔薇香を利用しようとする大人や、薔薇香の存在が邪魔な大人が近づいてくる。薔薇香はそういう大人に翻弄されながら、自分の本当の両親を探す。

 

色々な人物が登場するが、川島とヨシザキのインパクトが圧倒的だった。震災がテーマの話となると、震災によって人生が一変した人間の話をイメージするが、主人公である薔薇香は震災が起こる前からとっくにとんでもない人生を送っていて、人間の闇は天災よりも遥かに根深いことが示唆されているように思った。