• 著者: 桐生夏生
  • 読んだ感じ: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2024年11月

 

無人島に漂着した人間が、無人島で生活を営んでいく話。

 

隆と清子の夫婦は、クルーザーで世界一周旅行をしている途中に遭難し、無人島に漂着する。無人島には食料は豊富であり、助けを待ちながらサバイバル生活をしていたところ、20人くらいの若者が漂着し、共同生活が始まる。若者は全員男であり、半ばヤケで島にトウキョウと名付け、気の合う仲間同士で、シンジュク、シブヤなどの地域に分かれて生活を送る。

 

無人島生活は数年に渡り、表向き平和に過ごしていたが、隆の死をきっかけに、清子の奪い合いが始まる。清子は島に住む唯一の女として、自分の肉体を武器にしながら、女王として君臨する。その一方で、後に新たに漂着した中国人の集団に取り入って島からの脱出を試みる。脱出は失敗に終わり、島に戻ると清子の立場は一変していて、疎まれる存在になっている。そんな中で清子は妊娠し、そのゴタゴタで新たな人間関係が生まれていく。

 

閉鎖された島の中では、人間が死んだり、追放されたり、発狂したり、新たな人間が漂着するのだが、これによって人間関係に微妙な変化が起き、それによって社会構造が変化していく様子が面白い。無人島は食料は豊富であるものの、動物性蛋白は常に不足しており、住民はネズミや蛇を捕まえてなんとかして栄養を補給しているのだが、そんな描写がところどころに出てきて、読んでいて胃の中が何ともいえない感じになる。

 

最終的に、清子は島で出産し、生まれた子供によって、島の住民は2つに別れ、それぞれが全く違う人生を歩むことになるのだが、どちらの人生が幸せなのか、誰にも決めることはできない。