読書感想: 路上のX
- 著者: 桐野夏生
- 読んだ感じ: 2 (1-3)
- 読んだ時期: 2024年11月
突然自分の前から両親が姿を消し、叔父の家に預けられた高1女子の真由が、渋谷界隈で生きていく話。
真由は叔父の家で、叔父の2人の娘のダブルベッドの床に布団を敷いて寝ている。家は貧しくて食事がろくに出ず、朝ご飯は用意されない。昼食の弁当ももちろん用意されないが、小遣いは月に2000円なのでパンもまともに買えない。家にあるものを盗み食いしながら、できるだけ叔父家族と顔を合わせないように生活してきた。学校終わりに渋谷のラーメン屋でバイトをして、そのままカラオケ店でオールし、朝方に帰って寝て、昼過ぎに学校に行く。叔父の家に来る前は、私立の高校に行くことが決まっていたが、授業料を払えないので公立高校に変わったが、誰も授業をまともに聞いていないような学校であり、真由は出席数を稼ぐためだけに登校する。
叔母との言い争いをきっかけに、叔母のパート代数万円と娘の自転車を盗んで家出し、渋谷で生活をし始める。バイト先のラーメン屋の休憩室で寝泊まりさせてもらっていたが、次第に店長に疎ましがられて夜中に乱暴され、居場所を失う。ファミレス、マクドナルド、カラオケ店を徘徊するうちに、同じような境遇のリオナ、ミトと出会い、衝突しながら渋谷で生きていく。リオナは真由よりも更にひどい境遇で育ち、ある種の達観の境地に達していて、中学までは不自由なく過ごしてきた真由の言動に苛つきながらも、真由が自分と同じようには生きられないことを見抜いている。
全体的に救いが全く無い。生きるためには金が必要で、未成年の女子がそれなりの金を稼ぐには体を売るしかない。大人の男に玩具のように弄ばれることでしか生きていけない女子の心は当然荒んでいる。大人にいいようにされると分かっていながらも、空腹や眠気に耐えられずに大人についていってしまう場面は読むのが本当に辛い。
真由を保護する側の、親戚とか警察などの側の大人も、1人の人間の人生を丸ごと受け入れられるような余裕とお金のある人間は小説内に1人もおらず、真由の境遇を哀れには思いながらも本当の意味で手を差し伸べることはない。感情的、場当たり的に行動する真由に共感できない点もあるが、最終的には真由のような人間を生むのは大人の欲望とかエゴとかなんだろうなと思って、自分のクソな一面を思い知らされる。