• 著者: 原田ひ香
  • 個人的な印象: 2 (1-3)
  • 読んだ時期: 2025年7月

 

知人に原田ひ香のランチ酒という小説が面白いと聞いて、図書館で探してみたけどなかったので借りた代わりの本。借りたとき、隣におばちゃんがいて、之を手に取るのを若干躊躇したが名前のインパクトが勝って借りた。

 

おっぱいの大きな三人組が、マンションのいざこざを近隣住民とすったもんだしながら解決していく話だと思っていたらそうではなくて、エキセントリックな建造物で鳴らしたバブル時代の建築家、小宮山悟朗の最高傑作と言われる、メタボリズムをコンセプトとし、サイコロのような四角い部屋が積み上がったてっぺんにおっぱいのような部屋が2つならんだデザイナーズマンション (通称おっぱいマンション) の改修争議を通して、小宮山悟朗および彼の建造物に人生を振り回された人々を描いた話だった。

ちなみにメタボリズムとは、生物の代謝のように建築物も社会の変化に合わせて変化していくべきだという1960年代くらいに日本で起こった建築運動らしいのだが、メタボリズムを標榜しているおっぱいマンションは、デザイン性を重視するあまり、雨樋を使わなかったことで外壁から水が侵入してくるなど、居住性の一部が損なわれており、しかもそれをうまいこと改修することができないので、建て替え話が持ち上がっており、全然メタボリズムのコンセプト成立してねえじゃねえかとツッコまざるにはいられない。

 

小宮山悟朗の娘である小宮山みどりの、父親に反発心を覚えながらも彼の七光をうまいこと利用してインテリアデザイナー的な地位を築いてしたたかに生きている感じが結構好きだった。

 

築45年のマンションを存続させるか建て替えるかが争議の中心になっているので、登場人物は基本的に高齢者であり、一橋桐子の犯罪日記と同様、女性高齢者はどこかしらに魅力なり可愛げがある一方で、男性高齢者はひたすらに地味で陰鬱である。