読書感想: 母影
- 著者: 尾崎世界観
- 個人的な印象: 2.5 (1-3)
- 読んだ時期: 2025年7月
小学生の少女と、その母親で、多分違法なマッサージ店で多分体を売る商売をしている女性の話。
少女は学校にも家にも居場所がなく、母親が働くマッサージ店で、カーテンの向こうで隠れながら母親の仕事が終わるのを待っている。母親は自分の仕事を、お客の壊れたところを直す仕事、と説明している。少女はそれを文字通り受け取り、また、母親と客であるオジサンとの間で交わされる、普通のマッサージから性的サービスに移行するまでの微妙な会話も、文字通り受け取っている。カーテンの向こう側で苦しげな母親を心配しつつも、多分自分と母親の関係性が決定的に壊れてしまうことを直感的に分かっているために、カーテンの向こう側を覗くことはしない(できない)。
クラスメートは少女の母親が「へんたいマッサージ」をしていることを知っている。クラスメートの両親は、少女と母親と関係を持たないよう距離を取っているが、父親側は「へんたいマッサージ」に少なからず興味を持っている。少女と母親、母親と客、少女と友達の距離感が、第二宇宙速度でギリギリ恒星の周りを回っている惑星のように絶妙につかず離れずであり、それが少女と母親の希望でもあり絶望にもなっている。小説は唐突に終わり、二人の生活に希望が兆すこともない。