表題の記事は、6月10日付のオリンピックに関するコラム的な記事であるが、記事中の図の中で、「日本人は五輪に自らを投影してきた」という表題のもと、司馬遼太郎氏の写真およびその小説「坂の上の雲」の一文が引用されている。

https://special.sankei.com/a/sports/article/20200610/0001.html ※有料会員しか全文を読めません。

この図を見ると、いかにも本小説がオリンピックに関する物語であるとか、もしくは司馬遼太郎氏がオリンピックに思いを馳せて坂の上の雲を執筆したように見えなくもない。

しかしながら実際には、本小説は日露戦争前後の日本に関するものであり、オリンピックとは無関係である。

そして、本記事で本小説に関する記述は、「どこかの長官的な人が、坂の上の雲を読んで、オリンピックとはつまり坂の上の雲なんだ、とに思いを馳せた」というエピソードである。つまり司馬遼太郎氏ではない別の個人が坂の上の雲をオリンピックと結びつけたということが紹介されている。

以上を踏まえると、図の表現と記事の内容とに乖離があり、あえてミスリードを誘っている (つまり司馬遼太郎氏にあやかってオリンピックの開催にポジティブなイメージを与えようとしている) ような感じがしないでもなく、いち司馬遼太郎ファンとして、違和感を覚えた。

本図に、司馬遼太郎氏と並んで、江藤淳氏と本誌の記事「幻影の日本帝国」が示されているのだが、こちらの記事はオリンピックに関するものであるので、なおさらややこしい。